2021年1月7日木曜日

団地のよさを活かすためにリノベーションではなくリペアする

団地を購入してリノベーションすることが住まいづくりの選択肢として認知されつつあります。ただ残念なことに先行する事例の多くは、団地を「今の暮らし方や嗜好に合わないもの」とネガティブにとらえ、間取りや仕上げを刷新しています。その過程で団地がもともと持っている良さが失われているように感じます。

建物の持ち味を根底から捨て去ってしまうリノベーションは、「リノベーションの皮をかぶったスクラップ&ビルド」です。本来の意味でストックを活用するためには「悪いからなおす」でのはなく、「いいものだから使い続けたい」という感覚が必要です。

そこで吉永建築デザインスタジオが提案するのは新品のように取り繕うリフォームでもなく、がらりと作り変えてしまうリノベーションでもなく、よいところを生かして仕立て直す「リペア」という発想です。お気に入りの靴や着物を丁寧にリペアしながら使い続ける感覚です。

新金岡団地で取り組んだ『しんかな団地リペアプロジェクト』では、今の時代だからこそあえて「団地らしく」改装することを意識しました。間取りをなるべく替えず、仕上げや金具も使えるものはそのまま使い、痛んでいるものについてはオリジナルに近いものを選びました。

無垢材のフローリング、壁や天井のペンキ仕上げ、塗装仕上げの扉は、傷んでも塗りなおしたり削ったりすることで比較的手軽に補修ができます。少しずつ手直しをして、長い年月に積み重ねられた補修の跡は、年輪のように住まいの歴史を語るでしょう。完成してからも、住み手がリペアしながら住み続ける住まい。「いい団地だから、なおして暮らす」営みを長く続ける住まいになればと願います。

参考)