依頼者様からご相談があったのは2022年の6月でした。まずは下見を兼ねて改装予定の町屋にうかがいました。
大正時代に建設されたもので戦時中の空襲や地震でも被害を受けず現在に至っています。傷んでいるところはありますが、大きな雨漏りや(以前に屋根は葺き替え)体感で感じられるレベルの傾きや著しい床鳴りなどもなく築年にしては良い状態でした。
床の間や欄間など和室の造作は今となっては作ると高価なものもあり、元の建物質のよさがうかがえました。特に興味深いのは地下室があるということです。大正時代で地下室というだけでも驚きですがレンガ造というのもレアです。
以前に住宅メーカーにも活用を打診したそうですが建て替えを薦められたそうです。これだけ貴重な建物を自分の代で壊してしまいたくない、次の代に引き継ぎたいと依頼者は長年思い続けたそうです。一方、今の時代に合わないところは直さないといけない。
そこで弊社に依頼があったわけ。これだけレアで質が良いたてものに建築家心がくすぐられないわけはありません。まずはどこまで何ができるか、かかる時間や工費など検討するため工務店を交えて建物の調査を行うことにしました。