2009年4月27日月曜日

【月曜コラム】 建築で「日常の面白さを見つけること、伝えること、活かすこと」 =ポテクリ その3

先週の続き

S町はどこまでもまっ平らに田んぼが広がるまちでした。
そしてこんもりした森が島のようにポツンポツンと
田んぼの“海”に点在していました。
これがS町独特の景観、日本の田園地帯の風景。

「この風景を保ちながら住宅地開発ができないか」
をテーマに方法を模索しました。

景観条例や指針をつくって開発の広さや場所を制限する…
というのが一般的にとられる方法でしょうが、
仮に制限したとしても狡猾に規制を交わすところも
出てくるでしょうし、現実的ではない。
そしてS町が気に入らなかった案は
まさにこれでした。みんなが守ればいいけど、
誰かが守らなくなるととたんに破綻する。

ここでもう一度、S町の風景を思い返してみました。
島のような森は木だけが茂っていることはほとんどなく
木々のなかにはかならず神社や農家が建っていました。
「鎮守の森」と「屋敷森」が海上のような独特の風景をつくっている。
ならば新たに開発した土地は
必ず高木で囲うように指導するか義務付ける
というのはどうだろうと考えました。

これならばどんな開発をしてもただ森が増えていくだけで、もとの風景は変わらない。
そして遠い将来は田より森が多くなり、緑豊かな住宅地へと成長していく。

住宅地の開発が進めば進むほど木々が増えていく…その矛盾が面白い。
この発想はS町の景観から拾い上げたポテンシャルによって
生まれました。これが吉永建築デザインスタジオの考える
ポテンシャルをクリエートすること=ポテクリなのです。

次週に続く




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