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2021年6月3日木曜日

[再々掲]収益のための木造3階建てアパートを建設するときに気をつけること

東京都八王子市のアパート外階段崩落事故が話題となっています。

参考|八王子アパート階段、設計と異なる木造で施工 防水加工不十分で腐食、崩落か(東京新聞より)

関連して過去のこのブログに書いた記事を2回にわたって再掲します。一つ目は投資用アパートの工事費の安さについてです。読みやすくするため少し加筆しています。

ちょうど一年前の今頃、投資用アパートの設計依頼が数件問い合わせがありました。アパート投資が盛んであることは聞いていましたが実績が少ない弊社に話が来るとはそんなに忙しいのだろうかと思って相談に乗っていました。しかしお話を聞くうち、これは相当あちらこちらで断られているのではと思うようになりました。なにしろご希望の予算がご希望の規模に比べてあまりにも少ない…。

そのうちの一つの依頼者さんは“この坪単価で前に建てたことがあるから大丈夫”と参考図面を送ってきたのですが見てみると、いやいやその坪単価では無理無理という内容。でも建ったというのだから工務店は赤字覚悟でやったか、なんらかの手を抜いていたのではないかと…。

木造アパートの工事費は最低でも坪70万円以上は必要と考えています。ところが依頼者のご希望は判を押したように一坪当たり40万円以下なのです。工事費坪40万円で木造3階建てアパートを建てられるのか。たしかにその金額でもできるかもしれません。

ただし施工する工務店の質が保証できません。過去極端に工事費が安い工務店に工事を依頼したことがありますが、工事後のアフターケアの対応が悪かった経験があります。投資のためとなれば建物を長期にわたりメンテナンスをしていかなければなりません。工務店のアフターケアに対する姿勢の善し悪しはアパートの経営の善し悪しにつながります。建設中は一生懸命であっても引き渡すと建物に興味がなくなる工務店は残念ながら存在します。

施工会社は相場より工事が安いため投資用アパートを建てたい人に人気があったようです。各種報道を見ると件の八王子のアパートはまさに私が恐れていた通りだったということです。残念なことに…

二つ目の再掲は次週に投稿します。




2020年8月30日日曜日

土間空間におすすめのテラコッタタイル

夏休みは高知県土佐清水の海癒というリゾート施設で過ごしました。宿泊した部屋は写真のとおりオーシャンビューで快適に過ごせました。床に張られているテラコッタタイルがなかなかよかったので紹介します。


張られていたのは「テラコッタ風」タイルではなくまさにテラコッタでした。「テラコッタ風」タイルは表面に釉薬がかかってつるつるしていますが、テラコッタはなにもかかっていない素焼きのちょっぴりざらざらしている状態です。タイルではキンと冷えた冷たさを足裏に感じますが、テラコッタの方は柔らかい冷たさを感じます。海から濡れた足で帰ってきて素足で歩くとスッと足裏の水を吸ってくれてこれがここちよい。最近珪藻土マットが流行っていますがちょうどあの感じです。室内に土間空間を設けたいときに採用候補としておすすめです。



2020年6月14日日曜日

長く住み続けたいなら扉は既製品ではない方がよい理由

東大路高野住宅リノベーションの現場が進んでいます。

ここではリノベーション前の建具を引き続き利用しています。そのまま使えるものは塗装だけを塗りなおし、寸法を変える必要があるものは作り直しもしくは加工しています。

たとえば天袋の両開き戸の片方の扉だけ幅を替えたり。


以前のオーナーが高さを変えた扉を元に戻したり。


元の建具を再利用すればコストは抑えられますし、場所によって扉のデザインが変わってしまうこともありません。実はこれは建材メーカーで販売されている既製品の建具では難しいことです。

既製品の建具は表面が樹脂のシート張りになっています。加工しようとするとシートが破れるのでそのまま使うことはほぼ不可能。塗装できないこともないですがはがれないようにきれいに塗るのは大変です。

また既製品の建具は周りの枠とセットですので扉を替える⇒枠を取る⇒壁を傷める⇒壁の工事も必要となりコストが跳ね上がります。強引に扉だけ替えられたとしても扉と枠のデザインがちぐはぐになることは避けられません。

その点、建具屋で製作したフラッシュ扉は加工が容易ですし、多少痛めても塗装で補修することができます。扉と枠はもともと別に作っているので扉だけ交換することが容易ですし、塗装でデザインを合わせられます。


このリノベーションで新たに付けた扉はシナ合板のフラッシュを使いました。新旧の扉のデザインを合わせることができ、将来の変化にも対応できるようにするためです。既製品より少しコストはかかりますが長い目で見ると十分ペイできるのです。新築の場合でも安易に既製品の扉を採用を決める前にこの点よくよく考えることをおすすめします。


2020年6月7日日曜日

新型コロナウィルス対策をすると間取りは農家に近づく

新型コロナウィルス感染防止のため、家に帰ったら手洗い、できれば服を部屋に持ちまずシャワーを浴びることが有効と言われてます。これはインフルエンザや花粉症対策になるのでコロナ禍が収まっても続けるとよい習慣です。家の間取りが一連の行動がしやすいようになっていると習慣にしやすくなりますし、より効果が高くなります。ではどんな間取りがいいかとちょこちょこスケッチしているうちに昔、農家のおじさんが住んでいた家を思い出しました。玄関が広い土間になっている典型的な農家の作りです。




農作業から帰ってくる→裏玄関から家に入る→土間で土のついた作業着を脱ぐ→風呂で体を洗う→着替えて部屋に上がるという流れがスムーズにできる間取りになっています。この流れは家に帰る→部屋に入る前に服を脱ぐ→手や体を洗う→着替えて部屋に入るというウィルスや花粉を部屋に持ち込まないための間取りにも応用できそうです。おじさんの家は後に建て替えられましたが考え方はこの間取りと同じです。家の中に広い土間があると外に出れないときでもそこで遊ぶこともできますね。新型コロナウィルス対策をすると間取りは農家に近づいていくかもしれません。家の中にゆったりとした雰囲気をつくりだしますのでコロナ禍に関係なく、間取りに取り入れてみてはいかがでしょうか。













2020年5月17日日曜日

外壁とテラスに無垢の木を使うと経年でどれくらい痛むか、そして補修

外壁やテラスに無垢の木を使うことを考えている方のために
経年でどれくらい痛むのか事例を紹介しましょう。

事例となるのは弊社設計の高槻のスキップフロアハウスです。
外壁はカラマツ、ウッドテラスにはベイスギを張っています。
竣工当時の写真↓

築5年外壁↓
この年からほぼ毎年DIYで塗装を塗るようになりました。
日には焼けてきましたがきれいな状態です。

築10年↓
雨や日射がよく当たる箇所の傷みが目立つようになってきました。
デッキは表面が黒ずんでいますがしっかりとしています。


そして築15年↓
外壁は全体的に黒ずんできました。
また今まで塗り重ねてきた水性塗装が経年劣化で日焼けの跡のようにぽろぽろと捲れてきました。

見栄え的にも耐久性的にもDIYでの補修はこれ以上は難しいと判断し工務店に塗り替えを依頼しました。
地面からの雨の跳ね返りの影響で傷みが激しかった足元については張り替えました。
ウッドデッキは全体的には大丈夫だったのですが一部朽ちていたので全面的に張り替えました。

補修完了の様子です↓
全体的に黒ずんでいたので思い切って濃い色で塗りなおしました。
張り替えた個所と既存のままの箇所で色が変わってしまいますが時間がたてばなじむでしょう。

塗料はキシラデコールを塗りました。工務店によれば外壁はこれで5年は持つでしょうとのこと。
それ以降は前よりいい塗料を使ってDIYしていく予定です。5年ごとにプロに頼むと結構かかりますから。
前は扱いやすさを優先してホームセンターで普通に売っている水性の塗装を塗っていました。
工務店によると前述の通り年数がたつとぽろぽろはがれていくことがあるそうです。
10年くらいはもつけれどもそれ以降を考えるとどうかなといったところです。次回はキシラデコールかなと思っています。


2020年5月10日日曜日

デスク周りを家具を買わずにDIYでしつらえる

ゴールデンウィークの間にデスク周りを整理しました。
我ながらこれは上手くできたな、というしつらえを2つ紹介しましょう。 

本棚を整理するたびカタログをどう置くかが課題になります。
今回の整理ではジャンル分けがわかりやすいようにMDFの板で仕切りをつくりました。
つくりました、といっても30センチ角のカット品に
マスキングテープ貼って手書きでインデックスをつけただけです。
質感もいいですし、適度に目立って探したいジャンルに目が届きやすいです。 


もう一つはパソコンの後ろに配線隠しとピンナップと棚を兼ねた置き家具をつくりました。
材料はコーナンでそろえました。これで配線関係がスッキリしましたし、
ちょっとしたピンナップや充電中のガジェットを置くことができます。


ピンナップボードの後ろはこんな感じです。ハードディスクや電源アタプタを収めてます。
電源タップやケーブルはこの下に収めました。


ピンナップ部には本来棚板の指示に使う棚柱を取り付けて、
メモや充電コードを磁石で取り付けられるようにしました。
デスクの作業面は狭くなりましたが、どこに何を置くか整理しやすくなったので
作業はむしろしやすくなりました。明けから快適に作業をしています。
4月からリモートワークに切り替わって自宅で仕事をされている方は是非ご参考ください。

2020年5月5日火曜日

長期的にみると無垢のフローリングの方がお得

東大路高野住宅で進んでいるリノベーションに絡めて
今回は無垢のフローリングだからできる補修のお話し。


このお部屋は以前の住まい手によって、床が無垢のフローリングに改装されていました。
雰囲気がよいうえ状態も良かったのでそのまま使うことにしています。

以前の住まい手は床付きのコンセントをたくさん設けていましたが
いくつかは生活に邪魔になるので撤去することにしました。
取り外したままだと床に穴が開いてしまいますので、
穴周りのフローリングを剥がし、
新しいフローリングを張って補修しています。




写真では張りなおした箇所が目立って見えますが
ワックスをかけて日がたてば周りとなじんで気にならなくなります。

これは無垢のフローリングだからできる芸当です。
建材メーカーのシステムフローリングが
下の写真の様に部分的に傷んでいるときの補修はどうなるでしょう↓


建材メーカーは流行りに合わせて新製品を作る一方、
流行りが廃ると廃番にしていきます。
もし10年後、20年後に今回の様に部分的にフローリングを
張りなおそうとしても同じ柄のフローリングがないということになります。
元の柄が違えばどうやっても違いが目立ちます。
フローリングを全部張りなおすか、柄の違いを我慢するかしかありません。
部分的に張りなおすのと全部張りなおすのでは工事費が一桁変わります。
部分的に張り替えればいいのにそれではもったいないですよね。

無垢のフローリングならば、木は何十年と不変ですから
探せば違和感がない似た表情の製品を選ぶことができます。
着色も可能ですから周りと色目も合わせやすいです。
イニシャルコストとしてはシステムフローリングの方が安いですが
長期的にみると無垢のフローリングの方がお得であるということです。
この点からも長く住み継ぎたい家をつくるなら床は無垢のフローリングがおすすめです。



2019年8月26日月曜日

中古マンションのススメ、大規模修繕の視点から2

前回の続き

前回のブログで書いたように新築マンションにおいて
長期修繕計画が適切かどうか知ることは大変難しいことです。
しかし中古マンションは新築に比べると調べることが容易です。


築数十年経っているマンションであれば
すでに1、2回は大規模修繕工事を行っているはずです。
その時に資金不足を起こしていないか、
計画通り適切に工事が行われたかを見れば計画が適切かどうかはっきりします。
仮に1回目で失敗した場合でも以降きちんと計画を見直しているかどうかもポイントとなりますし
計画通りでなく五月雨式に工事を行っているならばこれはとても不安となります。
新築マンションではそうなるかどうか想像するしかありませんが
中古マンションの場合は議事録や修繕履歴など書類と建物のキレイさなど
目に見える形で現れてきます。

築浅でまだ大規模修繕工事を起こっていないマンションの場合はどうでしょう。
その場合は長期修繕計画の見直しが行われているかどうかで判断できます。
国交省は5年ごとに計画を見直すことを推奨しています。
この見直しを行っているかどうかは一つの目安となります。
残念ながらほとんどの新築マンションの大規模修繕計画は何らかの欠陥を抱えています。
だからこそ国も見直しするよう知らせているのですが
それをスルーしてしまうマンションも少なくなく将来的に
工事費不足や十分修繕ができない事態に陥ります。
逆にそうならないように計画しているなら大丈夫。
中古マンションはそこが見極められるのです。

長期修繕計画という視点で考えたとき
新築マンションがいいか中古マンションがいいかその答えは明らかなのです。





2019年7月8日月曜日

中古マンションのススメ、大規模修繕の視点から

吉永建築デザインスタジオは中古マンション購入+リノベーションする
お客様のために物件探しからお手伝いしています。


昨今、タワーマンションに関する報道の中で
将来適切に大規模修繕が行われないために廃墟化する可能性があることが
繰り返し取り上げられています。
資金と工事内容を吟味した計画がされていればタワーマンションであっても廃墟化することはありませんし
しっかり計画されていなければ低中層のマンションでも起こりえることです。

新築マンションだけの話ではなく中古マンションにも当てはまりますが、
この問題に関していえば実は中古マンションの方が有利な立場にあります。

なぜなら新築マンションの場合、購入時に
大規模修繕の計画がきちんとされているかどうかを調べる術がないからです。
購入時に計画自体を見ることはできます。
しかしそれが適切な計画かどうかを調べるには
建物の図面や仕様の確認、工事にかかる金額の精査が必要です。
プロであっても数週間はかかる作業になるので、購入前に調べつくすのはかなり難しいです。

では、中古マンションの方はどうでしょう。(続く)











2019年4月14日日曜日

消費税増税までに今から間に合うのか


先日、住宅取得に関する制度改正の説明会に参加してきました。
省エネ基準などもろもろのテーマの中で特に聞いてみたかったのは消費税増税のこと。

簡単にまとめると
1)10月の増税以降引き渡しを受ける場合は消費税は10%
2)ただし、4月までに工事請負契約を締結した場合は10月以降引き渡しでも8%でOK
となっています。

では実際現時点(4月中旬)でスケジュール的に可能なのでしょうか。
○戸建て住宅の場合
・戸建て住宅の工期は半年程度です。4月以降着工ですと
 10月引き渡しは不可能もしくはぎりぎりになります。
 駆け込み需要で職人の不足も予想されますので10%を逃れるのはとても難しいです。
・これから設計をはじめるとなるとなおさらです。

○リノベーションの場合
工期は建物の構造や規模にもよります。
マンションのフルリノベーションで2ヶ月程度でしょうか。

設計はフルリノベで3ヶ月はほしいところ
マンションのフルリノベーションの場合、
設計は3ヶ月、工事2ヶ月は欲しいところですので余裕を見て半年といったところでしょうか。
となるともうアクションを起こさないと間に合わないかもしれません。
物件購入からとなると改装の内容によっては厳しそうです。

戸建ての場合もリノベーションの場合もギリギリになりそうなら10月引き渡しにこだわらない方が賢明です。
駆け込み需要でどこの施工業者も忙しいはずです。万が一で工期が間に合わない可能性もありますし、
間に合わせるあまり施工が荒くなっても困ります。
それでもなんとかーという方はご相談にのりますのでまずはご連絡ください。

2019年3月10日日曜日

施工不良を防ぐお役目

今回は工事監理者という聞きなれないお役目についてのお話し

施工不良問題が起こると世間的には工務店は何をしているのだ!と話題になるわけですが、
一方で設計業界の中では「工事監理者は何をしているのだ」が話題となります。

工事監理者は施工不良を防ぐ重要なお役目です。
工事監理者が図面通りに工事がされているかどうかをチェックすることで施工不良を防ぎます。
建築基準法、建築士法で以下の様に規定されています。
●建築士法第18条3項
建築士は、工事監理を行う場合において、
工事が設計図書のとおりに実施されていないと認めるときは、
直ちに、工事施工者に対して、その旨を指摘し、
当該工事を設計図書のとおりに実施するよう求め、
当該工事施工者がこれに従わないときは、その旨を建築主に報告しなければならない。

●建築士法第2条8項
この法律で「工事監理」とは、その者の責任において、工事を設計図書と照合し、
それが設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認することをいう。

建築主は(ほぼすべての建築工事にて)工事監理者を定めなけれなならないことが法律で決まっています。
建築基準法で以下の様に規定されています。
●建築基準法第5条の6 
4.建築主は、第一項に規定する工事をする場合においては[中略]
 規定に基づく条例に規定する建築士である工事監理者を定めなければならない。
5.前項の規定に違反した工事は、することができない。

え?「定めなければならない」?!
定めなければ工事をすることができないのに決めた覚えがない…という方でも
注文住宅の場合ならばいつの間にか決められているのです。
だれが工事監理者をつとめているかは確認申請書類に記されています。

どの工事にもこの工事監理者がいて図面通り、確認申請通り工事されているか
チェックしているので施工不良、少なくとも「図面と異なる」ことは理屈としては起こりにくいはずです。
しかし重要なお役目の割に設計者や現場監督に比べるとその存在は薄い…
これがありえない施工不良が頻発する原因の一つなのです。

工事監理者が必ずいるはずなのに施工不良が起こることがある。なぜ起こるのか。
それは工事監理者が十分に工事監理をしていない名ばかり工事監理者であることが考えられます。
設計施工が一緒の場合など工事監理者が、
工事を行う工務店や関連の業者の場合はそうなる可能性が高くなります。

設計と施工が別の場合は設計事務所が工事監理も引き続き行うことが多いので
設計施工一括の場合に比べて施工不良防止がしやすくなります。

では設計施工一括の場合はどうしようもないのでしょうか。
その場合は工事チェックだけを手がける設計事務所に頼む手があります。
参考)さくら事務所関西|新築工事チェック
すでに工事監理者が決まっている場合は法的な意味での工事監理はできませんが
第三者的にチェックを行うことで施工不良を防ぐことができます。

2019年2月17日日曜日

[再掲]収益のための木造3階建てアパートを建設するときに気をつけること

レオパレスの施工不良問題(不良以前の問題と思いますが…)が話題になっています。

ちょうど一年前の今頃、投資用アパートの設計依頼が数件問い合わせがありました。
アパート投資が盛んであることは聞いていましたが実績が少ない弊社に話が来るとは
そんなに忙しいのだろうかと思って相談に乗っていました。

しかしお話を聞くうち、これは相当あちらこちらで断られているのではと思うようになりました。
なにしろご希望の予算がご希望の規模に比べてあまりにも少ない…。

そのうちの一つの依頼者さんは
“この坪単価で前に建てたことがあるから大丈夫”と参考図面を送ってきたのですが
それを見るといやいやその坪単価では無理無理という内容。
でも建ったというのだから工務店は赤字覚悟でやったか、
なんらかの手を抜いていたのではないかと…。
結局、こちらから断ったり、予算が少ない旨伝えるとパッタリと連絡が来なくなったりで
どれも仕事になりませんでした。

そんなことがあった時に書いたブログを再掲します。


ここ最近、収益のための木造3階建てアパートの相談が来ますが
毎回、ご希望の工事単価に驚かされています。

今までの経験では木造の戸建て住宅で一坪当たり60万円以上は欲しいところ。
ローコストの場合でも建物のクオリティを考えると坪50万円が限界と考えています。
それが法律上の規制が厳しいアパートとなれば戸建て住宅よりスペックが上がらざるを得ません。
また、一戸づつお風呂、キッチンを備えるので同じ面積であっても工事費は自然と高くなります。
となるとアパートでは坪70万円以上は必要と考えています。

ところが依頼者のご希望は判を押したように一坪当たり40万円以下なのです。
なぜかと思って[木造3階建てアパート、工事費]で検索してみると
その金額で設計施工している業者が何社かありました。
この業者の金額を参考にしてそれくらいでできるだろうと思われているのでしょう。

工事費坪40万円で木造3階建てアパートを建てられるのか。
たしかにその金額でもできるかもしれません。

ただし…

その1|施工する工務店の質が保証できません
過去極端に工事費が安い工務店に工事を依頼したことがありますが、
工事後のアフターケアの対応が悪かった経験があります。
投資のためとなれば建物を長期にわたりメンテナンスをしていかなければなりません。
工務店のアフターケアに対する姿勢の善し悪しはアパートの経営の善し悪しにつながります。
建設中は一生懸命であっても引き渡すと建物に興味がなくなる工務店は残念ながら存在します。

その2|ありきたりのアパートになります
前述の安く設計施工を行う業者ではなく、
設計事務所に設計を依頼するということは
他のアパートと差異化を図る意図があってのことと思います。

坪40万円以下という金額でアパートを建設しようとすると
おそらく「同じ」仕様の建物を年に何棟も建設する想定でなければ不可能でしょう。
そんな業者のアパートと差異化を図ろうとするならば「特別」なことをする必要があります。
ということは彼らと同じ単価ではご希望のアパートは不可能ということになります。




2018年12月2日日曜日

[再掲]DIYでの自宅の窓断熱

昨年冬に行ったDIYでの自宅の窓断熱について
夏の断熱効果もあるのでは(+ずぼら)と貼りっぱなしのまま1年過ごしました。
日差しを結構防ぐことができたので
室内環境には夏冬関わらす貢献したのではと思います。
両面テープがはがれかけてきたので
本格的な冬に備えてそろそろメンテナンスをしなければ。

参考に3月に書いた記事を再掲します。
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3月に入り関西ではだいぶ寒さもゆるんで参りました。
さて、ひと冬終わろうとしているところで
12月からはじめたわが家の窓断熱の効果のほどを報告したいと思います。

今までの経緯
[DIYでの窓断熱]
[DIYでの窓断熱 その後]






発泡スチロールを窓の大きさに切って両面テープで貼り付けるだけでしたが結果は上々でした。

例年は掛け布団と毛布、そしてパネルヒーターをつけて寝ていました。
それでも寒く、顔が冷たいのはどうしようもありませんでした。
もちろん窓の結露もひどい。

しかし今年は掛け布団で十分。時には暑いほど。
ガラス面からの冷気が押さえられたことが大きかったようです。
昨年までは室内に畳二枚の大きさのパネル“クーラー”があるような状態でしたからね。
ガラス面が室内の空気にふれにくいおかげで結露を抑える効果もありました。

断熱材とガラス面の間にカビが発生しないか心配だったのですが
鉛筆でちょんちょんと書いた程度の大きさしか発生しませんでした。


室内が暗くなる、窓の開閉がやりにくくなる、ということはありましたが、
この窓には元々障子が入っていたのでその代わりと思えば気にならなかったし、
換気のときくらいあけることがなかったので支障はありませんでした。

条件が同じ部屋ならDIYの手間や工費と断熱性能を考えるととても効果あり、
といったところです。
参考になればさいわいです。






2018年10月14日日曜日

「大改造!!劇的ビフォーアフター」団地リフォームを見て 3

前回の続きです。

性能や安全性について疑問に思った点もありました。

フローリングの代わりに杉の集成材を張っていました。
これはなかなかいいアイデアだと感心しました。
ならばなぜみな使わないのかというと反る可能性があるからです。
単板の無垢板ではないので少ないとは思いますが気を付ける必要があります。
その点、あの細い釘で反りを押さえられるのか心配です。
本来隠し釘は家具などで軽い材料を接着剤でとめるときの仮止め用の釘ですから。

浴室で床タイルの隙間から水が床下に漏れていくので心配と説明されていました。
リフォームではそのタイルの上に単にモルタルを敷いてタイルを張りなおしていましたが
漏水を心配するのではあればその前に防水を施工する必要があります。
単に貼りなおしてもタイルの隙間から同様に水は床下に流れます。
ローコストだからそこに目をつむったのだとは思いますが。


弊社が手掛けた団地リノベーション『新金岡団地の白いワンルーム』では
浴室の防水性を高めつつローコストを図るためにタイルを撤去し防水をそのまま仕上げにしました。
ローコストだから性能は二の次でいい、というわけにはいかないのです。

2018年10月7日日曜日

「大改造!!劇的ビフォーアフター」団地リフォームを見て 2

前回の続きです。

番組を見ているとローコストの割に
逆効果ではないかと思われることもいくつかありました。

ローコストの時、解体費用額は地味に効いてきます。
番組内でLDKの解体の時に「これで120万」と言っていたのは冗談としても
この広さであれば20万~30万円は必要と思われます。
加えて解体時に痛めたところの補修費用もかかるので
費用を抑えるためにはなるべく解体箇所を減らすのがセオリーです。
その点からみるとちょっと壊し過ぎかなと。

ホームシアターにした部屋は押し入れを改造したほうがローコストだったと思います。
コンクリートのままだと音が響くということで
一枚400円程度のマットを貼っていましたが
50枚程度は張っていたので2万円はかかっているでしょう。
それならばボードを一枚張った方が安く済むような気がしますし、
押入れをそのまま残していれば響きを抑える効果があったでしょう。


また防湿のために床下にゼオライトを敷いていましたが
予算のバランス的に疑問を持ちました。

木造戸建ての場合は地面や床下に通じた空気からくる湿気を押さえるので意味があります。
しかし、この団地の建て方ですと地面から床までは十分距離があるので
地面から床下に湿気が上がってくることはほとんどありませんし
コンクリートの床と床面の隙間に外気は入ってこないので
こちらも防湿を考えないといけないほど湿気が入るとは考えにくいです。

一袋たった1000円とはいえ10袋程度は使ったでしょうからそこで1万円はかかっていますが
それほど湿気対策をしなくていい箇所にお金をかけるのはもったいない気がします。
喘息を持っていたからその点シビアになっているという話もありましたが
それならば断熱材をバルコニー面にも施す方が効果があったと思います。
あのままではバルコニー側が結露してカビが発生するかもしれません。


弊社が手掛けた『洛西ニュータウンの団地リノベーション』では
湿気・結露・カビ対策をすることがお客さんの要望の一つでしたので
バルコニー側の壁にも断熱材を設置しました。
こちらもローコストだったのですがご要望に応じて断熱にお金をかけました。
予算が限られている時はお金をかけるバランスは間違えないようにしたいところです。

つづく→





2018年9月30日日曜日

「大改造!!劇的ビフォーアフター」団地リフォームを見て

団地リフォームが「大改造!!劇的ビフォーアフター」
で取り上げられると知り、久しぶりに同番組を見てみました。
団地のリノベーションを考えている方はとても興味深く見られたと思います。

「いやいやそれは…」というところもありましたが
「ほぉ、そんな技が!」と感心するところもあり、
プロにとっても大変参考になりました。

ローコストでいい感じに仕上がっていたけど
実際のところどうなんだろう?と思われる方もいるのでは。

ということで、ここは補足説明した方が参考になると思った箇所について
解説していきたいと思います。


まずは一番気になると思う工事費について。

過去手掛けた団地リノベーションの事例から想像するに
普通に工務店に頼むと少なくとも400万円は必要だったのではと思います。

全部で198万3千円とのことでしたが
尼神インターさんなど出演者枠で手伝ってくれた方の
職人人件費は(おそらく)加味されていないこと、
解体費用が計上されていないことは大きいと思います。
材料費は安い印象はありますが設備機器はこの程度でしょう。

弊社が手掛けた中では
『高倉台団地暮らしのハコ301』が予算感的には一番近いです。
ご夫婦が家具製作額縁製作のお仕事をされているのでできる範囲でDIYとしたこと、
解体範囲を限定したこと、浴室とトイレはそのまま使うことで同程度の工事費に押さえていました。



番組を見ているとローコストの割に
逆効果ではないかと思われることもいくつかありました。
それについては次回お話ししましょう。





2018年7月14日土曜日

住まいを探している人のためのハザードマップ

先週の豪雨の際、万が一を考え高槻の実家に泊まりに行ってきました。
例年は特に心配していなかったのですが
記録的豪雨と聞いていましたし、その日は母が一人になるということで
家族とともに行くことにしました。


実家は私が設計しました。
建て替える前から合わせると50年近く住んでいますが
比較的川に近い場所にありつつもいままで地面が浸水することはありませんでした。
家探しをしているときの話を母が聞かせてくれました。
父は土木の現場技術者でした。
仕事柄関西圏のあちらこちらに行くので交通の便の良いところが条件だったそうです。
一方で土木技術者の目でここは大丈夫、ここはやばいという判断していたと思います。
山に近いところも見に行ったそうですが、最終的には平地で川が近いけど
ここなら大丈夫と言う勘が働いたのでしょう。父に感謝しなければなりません。


家探しの時にこの知見はとても大事だなと思います。
ただし我が家のように身内にその知見を持っている人がいるとは限りません。
そんな時役に立つのが【ハザードマップ】など
土地の災害危険情報や地盤の状況をまとめたサイト・アプリです。
いくつか紹介しましょう。

国土交通省ハザードマップポータルサイト~身のまわりの災害リスクを調べる~
https://disaportal.gsi.go.jp/

ここから家や土地を探している地域のハザードマップを調べることができます。

例えば私の住んでいる高槻では
近くを流れる川ごとにその川が氾濫した場合にどれくらい浸水するかもわかるようになっています。
土砂災害警戒区域も地図でわかります。表示例→わが街高槻ガイド


地盤も含めて状況を知りたい場合は「自分の地盤」があります。
タモリ倶楽部でも紹介されていましたね。
今立っている場所ずばりの安全性が表示されます。
これが一番わかりやすいのではないでしょうか。












2018年7月8日日曜日

無垢の木を使うこと、知られていないそのメリット

息子はmajakkaさんに無垢の木で作ってもらった椅子に座っています。
体が大きくなってちょっと座りづらそうだなと思ったら高さを調整してもらっています。

これが1歳の時↓


そして3歳、背が伸びたおかげでご飯が食べづらそうにしていたので座面をさげることに。
椅子の脚を切って調整してもらいました。


ご覧の通りばっちりの高さで喜んでいます。


最終的には手すりを取って高さをグッと下げて大人が座れる椅子になります。
たびたび買い替えるより安いし、
何より思い出が刻み込まれたものを長く使い続けるのはいいことです。
そんなことを身をもって息子に感じてもらえたらと思っています。

これが木の良いところで、
切ったり削ったり容易に調整することで長く使い続けられるのです。
中古のマンションを年に何軒も見ますが大抵が複合フローリングです。
表面が大きく傷ついていたり剥がれていたりする状態を直そうとするともう張り替えるしかありません。
当時のフローリングは大抵廃番になっているので部分的に張り替えるとつぎはぎになる。
ということで全面張替えで結構なお金がかかります。



無垢のフローリングであれば表面が傷ついても表面を削れば
元の美しい木肌が現れてきます。
表面だけ木の装いをしたフローリングではできない芸当です。
そういう思いから吉永建築デザインスタジオでは予算の許す限り
フローリングは無垢を使うようにしています。
団地のリノベーション、しんかな団地リペアでは
築半世紀を超えた団地をさらにもう半世紀使い続けるために
フローリングは無垢、建具は木製にしています。