2009年7月2日木曜日

けんちく知識の木曜日:邑楽町庁舎建設コンペ訴訟

世間では大きく取り上げられませんでしたが、
建築業界ではある訴訟の和解が話題となっています。

邑楽町庁舎建設コンペ訴訟:
和解成立 町が遺憾を表明 原告は請求放棄(毎日.jpより)

行政の長が入れ替わったり
支出の削減に伴って設計の見直しが行われること自体は
脱ダムの話などでよくあることですが、このケースは
背景が少し異なります。

建築専門誌からこの記事にいくつか補足をしておくと
・設計者は住民公開の場で行われた設計のコンテストで選ばれた
・選ばれた設計者は住民たちとワークショップを重ねて設計していた
・設計者は相当分の減額設計案を示したが町からは反応がなかった
・設計見直しのための予算が一時は議会で否決されていた
という経緯がこれにはあります。

住民に公開された場で設計者を選び、
住民参加で設計を進めていたプロセスが
無になってしまう。
これはとても残念なことです。

このあたりがいわゆる脱ダムの話とは違うところで
記事の中では“建築家として侮辱された”とされていますが、
侮辱されたのは住民なのかもしれません。
とはいえ、新町長を選んだのも住民ですから複雑です。

そして、それが“遺憾”の一言ですまされてしまうことも
原告たる建築家が“遺憾”の一言ですましてしまうことも
残念に思います。


大阪府北摂高槻市の建築家 吉永健一の設計事務所/吉永建築デザインスタジオはこちら→