2011年7月19日火曜日

建物の保存活用について思うこと その2:保存の要望書は保存の『提案書』でなければならない

こんにちは。
吉永建築デザインスタジオの吉永です。
えらく間が空いてしまいましたがその1の続き
*
奈良少年刑務所見学からしばらくして
友人の建築家からとある公共建築の保存の署名の依頼があり、
ぼくも“あぁ、あれを壊すのはもったいない”とこころよく応じました。
ただ気になったのは署名の提出先への保存要望書の内容。
つらつらとその建物の建築的価値、歴史的価値を
書き連ねているだけで、
残すことが「市民のためになる」という趣旨の
内容が一言も書かれていない。

行政は財政の厳しい中やりくりをするために解体して
土地を売却したいと考えている。それは建前であっても
市民のためということにかわりは無い。
「では、解体して土地を売却するのと
そのまま保存するのとどちらが市のためになるのか?」
行政も市民の不利益になることはおいそれとできないので
ここでようやく行政は同じテーブルについてくれる。
だからこそ残すことが「市民のためになる」ということを
きちんと示すことが最大の殺し文句になるのです。

と、いうことをその建築家に話したところ
次回からは盛り込む、と言っていました。
それはぜひ。

そしてその次にはどのように市民のためになるのか維持保存の資金となる
税金を払っている市民にキチンと説明する必要がある。
そのとき保存の要望書は保存の『提案書』でなければならない。
建物の保存はお願いの時代から脱却しないといけない。

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